文・人文学部の志望理由書

文学部・人文学部の志望理由書の書き方と例文3本

文学部・人文学部の志望理由書で問われるのは、本や歴史が好きな気持ちそのものより、テキストや資料を読んで何を確かめたいのかです。このページでは、志望理由書で見られる3つのポイントを説明したうえで、日本文学科・史学科・哲学の例文3本を800字・600字・400字で示し、ありがちなダメな例とその直し方、文学部を選んだ理由や面接での答え方、司書・学芸員・教員を目指す場合の書き方まで順にまとめました。人文学部や文芸学部に出願する人にも使える内容です。

文学部の志望理由書を3ステップで書く

  1. 1
    文学部の志望理由書は、「本が好き」「歴史が好き」の先で、読んでいて立ち止まった一文や資料の食い違いを見つけ、そこから問いを1つ立てるところから書き始めます。
  2. 2
    文学部を選ぶ理由は、その問いに答えるために本文の精読、史料の批判的な読解、概念の分析のどれが要るかを考え、日本文学・史学・哲学などの専攻と結びつけて説明します。
  3. 3
    志望理由書の後半は、志望校で受けたい演習と教員の専門分野を挙げ、基礎演習からゼミ、卒業論文へと進む計画と、学びを生かす進路を書いて、冒頭の問いへ戻ります。

このページが向いている人:文学部・人文学部で日本文学・史学・哲学などを学びたいと考え、総合型選抜や学校推薦型選抜、一般選抜で志望理由書を書く高校生のためのページです。「本が好き」「歴史が好き」の次に何を書けばよいか分からない人、面接で文学部を選んだ理由を聞かれたときの準備をしたい人、司書・学芸員・国語の教員など、文学部の学びを生かす進路をどう書くか迷っている人に役立ちます。

文学部の志望理由書で見られる3つのこと

文学部・人文学部が志望理由書で確かめたいのは、読んだ本の冊数や覚えた年号の数ではなく、テキストや資料を読んで自分で問いを立てられるかどうかです。専攻が文学・史学・哲学のどれであっても、次の3点が読まれる軸になります。

  1. 一

    「本が好き」「歴史が好き」を、読んで問いたいことに言い換えているか

    文学部・人文学部を志望するきっかけが「本が好き」「歴史が好き」であるのは自然なことです。ただ、大学で学ぶのは、テキストや資料を読み、そこから問いを立てて根拠のある答えを組み立てる方法です。好きな気持ちの先で、読んでいて引っかかった一文、二つの資料の食い違い、言葉の使われ方の変化など、自分が立ち止まった一点を探してください。きっかけは大きな出来事でなくても構いません。授業で読んだ古典、家に残る古い手紙、家族との会話でも、「なぜこう書かれているのか」と問えれば、文学部の志望理由として成り立ちます。

  2. 二

    専攻を選んだ理由と、その専攻の読み方を理解しているか

    文学部・人文学部には、日本文学、英米文学やフランス文学などの外国文学、史学、哲学、言語学、文化学といった専攻があり、読む対象も読み方も違います。文学は本文を一語ずつ精読し、表現や成立の事情から解釈を組み立てます。史学では、史料を誰がいつ何のために書いたかを確かめながら批判的に読み、過去の出来事を復元します。哲学が扱うのは「死」や「公平」のような概念で、意味を分析し、論証の筋道を検討するのが基本の方法です。自分の問いがどの読み方で答えられるかを示すと、専攻を選んだ理由がはっきりします。入学時に学科が決まる大学と、共通の科目を学んでから専攻を選ぶ大学があるため、募集要項で確かめてください。

  3. 三

    入学後の学びを卒業論文まで描き、社会での生かし方を添えているか

    多くの文学部では、1年次に基礎演習や概論で文献の探し方と読み方の基本を学び、2〜3年次から専攻の演習(ゼミ)で発表と議論を重ね、4年次に卒業論文をまとめます。志望理由書でもこの順序に沿って、どの演習で何を読み、卒業論文でどんな問いに答えたいのかまで書けば、志望校の学びの流れを理解していることが読み手に伝わります。最後に、学びを社会でどう生かすかを一言添えてください。中学校・高校の教員、司書、学芸員、出版社の編集者、公務員、企業など、進路は幅広くあります。職業名が決まっていなくても、読む力や書く力をどんな場で使いたいかを書けば十分です。

文学部の志望理由書 例文3本

日本文学科は競技かるたの札と『万葉集』の読み比べ、史学科は曾祖父が戦地から送った葉書、人文学部の哲学・倫理学コースは臓器提供の意思表示欄を題材にした例文です。いずれも志望理由書で使う敬体(「〜いたします」「〜と考えております」)で書き、大学は「貴学」と呼ぶ形に統一しています。

1

日本文学科・総合型選抜(競技かるたの札と『万葉集』の読み比べから)

791 字

私は将来、高校の国語教員として、古典を暗記するものではなく、読み比べて考えるものとして教えたいと考えております。そのために和歌の本文の移り変わりを学びたく、貴学文学部日本文学科を志望いたします。高校1年から競技かるた部に所属する私にとって、持統天皇の「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」は、読手の声で何百回と聞いてきた歌です。2年の古典の授業で国語便覧を開くと、同じ歌が『万葉集』では「衣干したり」と詠まれていました。注釈書で確かめると、札の「ほすてふ」は「干すという」という伝聞の言い方で、『万葉集』の形は白い衣が干された山を目の前に見た歌と読めます。目の前の景色を詠んだ歌が、伝え聞いた景色の歌に変わっていたのです。山部赤人の富士の歌にも似た違いがありました。部員15人に尋ねても、二つの形を知る人はいませんでした。鎌倉時代初めの『新古今和歌集』では、すでに札と同じ形になっています。言葉は誰かが意図して改めたのか、書き写され伝わる途中で変わったのか。形の違う二つの歌を、どちらも持統天皇の歌と呼んでよいのか。この問いに答えるには、本文を一語ずつ比べて解釈を組み立てる文学研究の方法が欠かせません。貴学では、2年次の『△△演習』で一首の歌を複数の写本や歌集で読み比べる訓練を積めます。また、〇〇教授が和歌の本文の書き換えを研究されており、札から始まった疑問に取り組めると考え、貴学を志望いたしました。入学後は1年次に古典文法とくずし字の基礎を固め、2年次の演習で写本を読む力を養います。3年次からは〇〇教授のゼミで、百人一首の歌が『万葉集』からどう形を変えたかを卒業論文にまとめる計画です。教職課程も並行して履修いたします。札の一語の違いに立ち止まった経験を出発点に、古典を読み比べる面白さを生徒に手渡せる国語教員になるため、貴学文学部で学びたいと考えております。

800字・総合型選抜(日本文学科)

この例文のポイント

  • 札で何百回も聞いた歌と『万葉集』の本文を比べ、「てふ」の一語で伝聞の歌に変わると気づいた発見を、学ぶ理由の中心に置いています。
  • 部員15人に尋ねた結果や『新古今和歌集』での形まで確かめ、好きなかるたを、本文の変化という文学研究の問いに育てています。
  • 演習・ゼミ・卒業論文と教職課程を年次順に並べ、締めでは札の一語に立ち止まった経験と、冒頭の国語教員という目標を結び直しています。
2

史学科・学校推薦型選抜(曾祖父が戦地から送った葉書から)

594 字

私は将来、地域の博物館の学芸員として、家庭に眠る記録を史料として読み解き、次の世代に伝えたいと考えております。そのために日本近代史と史料の読み方を学びたく、貴学文学部史学科を志望いたします。高校2年の夏、祖父の家の片付けで、曾祖父が戦地から曾祖母に送った葉書27通が見つかりました。どの便りも「元気でいる。心配するな」で結ばれ、多くに「検閲済」の印があります。市の郷土資料館に持ち込むと、戦地からの便りは軍の検閲を受け、居場所や戦況は書けなかったと学芸員の方に教わりました。部隊の記録と日付を照らし合わせると、最も明るい文面の1通は、激しい戦闘のさなかに書かれていました。書かれた言葉を、そのまま事実とは受け取れません。では、検閲の下で書かれた手紙から、書けなかったことをどう読み取ればよいのか。これが、史学を学びたいと考えた問いです。貴学を選んだのは、『△△演習』で近代の手紙や日記を、書き手の状況と照らして読む方法を学べるからです。また、〇〇教授が戦時下の兵士と家族の手紙を研究されており、資料館で抱いた疑問をそのまま深められます。入学後は史学概論と日本近代史の基礎を学びながら、学芸員課程も履修いたします。3年次からは〇〇教授のゼミで、軍事郵便を家族の側から読み解く研究に取り組む予定です。家庭に眠る記録を、次の世代が読める史料として残すため、貴学史学科で学びたいと考えております。

600字・学校推薦型選抜(史学科)

この例文のポイント

  • 「元気でいる」という文面を、検閲と部隊の記録から読み直した過程が、史料を批判的に読むという史学の方法そのものになっています。
  • 葉書27通、「検閲済」の印、最も明るい1通の日付と、自分で確かめた事実を積み重ね、書かれなかったことを読むという問いを立てています。
  • 資料館の学芸員に教わった経験を、学芸員課程の履修と学芸員という目標につなげており、推薦入試で見られる活動と進路の一貫性が伝わります。
3

人文学部哲学・倫理学コース・一般選抜(臓器提供の意思表示欄で迷った経験から)

395 字

私は将来、新聞記者として、医療や死をめぐる問題を読者が自分で考えられるように伝えたいと考え、貴学人文学部の哲学・倫理学コースを志望いたします。きっかけは、マイナンバーカード表面の臓器提供の意思表示欄です。「脳死後」と「心臓が停止した死後」で選択肢が分かれ、どれに丸を付けるかで手が止まりました。家族に尋ねると、父は脳死なら死だと言い、母は体が温かいうちは死と思えないと答えました。死は医学が判定するものなのか、周りの人が受け止めるものなのか。この問いは知識だけでは解けず、「死」という概念を分析する哲学の方法が要ると考えました。貴学では『△△講読』で死をめぐる哲学の文献を読み、〇〇教授のもとで生命倫理を学べます。入学後は論理学と倫理学の基礎を固め、3年次のゼミで脳死をめぐる議論を研究いたします。答えの出にくい問いを読者とともに考える記者になるため、貴学で哲学を学びたいと考えております。

400字・一般選抜(人文学部・哲学)

この例文のポイント

  • 父と母で答えが分かれた場面を示し、知識だけでは決まらない「死」の意味という、哲学で扱う問いにつなげています。
  • 概念を分析するという哲学の方法を書き、ほかの学部ではなく哲学・倫理学を選ぶ理由を、400字の中で示しています。
  • 新聞記者という進路と、読者とともに問いを考えたいという締めが呼応し、短い字数でも学びの使い道が見えます。

※ 上記は例文です。教授名・授業名・エピソードはご自身の情報に書き換えてください。

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文学部の志望理由書でよくあるNG

一NG

「本が好き」「歴史が好き」で終わっている

「好き」という言葉自体は、志望理由書のNGワードではありません。問題は、好きだと書いたところで説明が止まることです。文学部を受ける人の多くは本や歴史が好きなので、それだけでは他の受験生と区別がつかず、大学で何を確かめたいのかも伝わりません。

書き直し例

「本が好きなので司書になりたい」で止めず、「調べ学習で司書の方が3冊の資料を見比べて答えを示してくれたことから、資料を読み比べる力を身につけ、利用者の調べものを支えたいと考えました」のように、好きの先にあるものを書きます。

二NG

作品のあらすじや読書感想文になっている

好きな作品を伝えようとして、あらすじや感動した場面の説明に字数を使ってしまう例です。志望理由書は読書感想文ではないため、作品の中身より、その作品のどこに疑問を持ち、大学でそれをどう確かめたいのかが読まれます。あらすじは1文で足ります。

書き直し例

あらすじの代わりに、「『こころ』の後半が先生の遺書という手紙の形で書かれている理由が気になり、語りの形式が読者の受け取り方をどう変えるのかを学びたいと考えました」のように、作品から生まれた問いを書きます。

三NG

「好きな作家を研究したい」だけで、何を明らかにしたいかがない

作家名や作品名を挙げるだけでは、研究の対象は分かっても、何を明らかにしたいのかが分かりません。同じ作家でも、文体を分析するのか、作品が書かれた時代の背景を調べるのか、後の時代にどう読まれたかを追うのかで、学び方も選ぶゼミも変わります。

書き直し例

「太宰治を研究したい」で終えず、「太宰治の作品に、読者に語りかけるような一人称の文体が多いことに気づき、その文体が読者との距離をどう縮めているのかを調べたい」のように、作家の中で確かめたいことを書きます。

四NG

歴史を暗記科目として書いている

「年号や人物を覚えるのが得意なので史学科を志望します」と書くと、史学という学問を取り違えていると受け取られます。大学の史学は、残された史料を比べて信頼できるかを確かめ、そこから過去について問いを立てて答える学問です。覚えた知識の量は志望理由になりません。

書き直し例

「戦国武将が好きで年号もすべて覚えました」ではなく、「地元の城跡の説明板と町史とで築城の年が違うことに気づき、それぞれがどの史料に基づくのかを確かめたいと考えました」のように書きます。

五NG

「文学部は就職に不利と言われますが」と弁解から始めている

進路を気にするあまり、書き出しで「就職に不利と言われますが」「役に立たないと言われますが」と断ってしまう例です。弁解から始めると、学ぶ意味を自分でも説明できていないように読まれ、限られた字数も減ります。進路は、学びを生かす場として前向きに書いてください。

書き直し例

弁解を削り、「資料を読み比べて根拠のある文章を書く力を、企業の広報として自社の取り組みを正確に伝える仕事に生かしたいと考えております」のように、学びの使い道から書きます。

よくある質問

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学部ごとに、見られる観点・例文3本・NG例をまとめています。構成の基本と文系・理系の例文は大学の志望理由書の書き方で確認できます。

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