日本文学科・総合型選抜(競技かるたの札と『万葉集』の読み比べから)
私は将来、高校の国語教員として、古典を暗記するものではなく、読み比べて考えるものとして教えたいと考えております。そのために和歌の本文の移り変わりを学びたく、貴学文学部日本文学科を志望いたします。高校1年から競技かるた部に所属する私にとって、持統天皇の「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」は、読手の声で何百回と聞いてきた歌です。2年の古典の授業で国語便覧を開くと、同じ歌が『万葉集』では「衣干したり」と詠まれていました。注釈書で確かめると、札の「ほすてふ」は「干すという」という伝聞の言い方で、『万葉集』の形は白い衣が干された山を目の前に見た歌と読めます。目の前の景色を詠んだ歌が、伝え聞いた景色の歌に変わっていたのです。山部赤人の富士の歌にも似た違いがありました。部員15人に尋ねても、二つの形を知る人はいませんでした。鎌倉時代初めの『新古今和歌集』では、すでに札と同じ形になっています。言葉は誰かが意図して改めたのか、書き写され伝わる途中で変わったのか。形の違う二つの歌を、どちらも持統天皇の歌と呼んでよいのか。この問いに答えるには、本文を一語ずつ比べて解釈を組み立てる文学研究の方法が欠かせません。貴学では、2年次の『△△演習』で一首の歌を複数の写本や歌集で読み比べる訓練を積めます。また、〇〇教授が和歌の本文の書き換えを研究されており、札から始まった疑問に取り組めると考え、貴学を志望いたしました。入学後は1年次に古典文法とくずし字の基礎を固め、2年次の演習で写本を読む力を養います。3年次からは〇〇教授のゼミで、百人一首の歌が『万葉集』からどう形を変えたかを卒業論文にまとめる計画です。教職課程も並行して履修いたします。札の一語の違いに立ち止まった経験を出発点に、古典を読み比べる面白さを生徒に手渡せる国語教員になるため、貴学文学部で学びたいと考えております。
800字・総合型選抜(日本文学科)
この例文のポイント
- 札で何百回も聞いた歌と『万葉集』の本文を比べ、「てふ」の一語で伝聞の歌に変わると気づいた発見を、学ぶ理由の中心に置いています。
- 部員15人に尋ねた結果や『新古今和歌集』での形まで確かめ、好きなかるたを、本文の変化という文学研究の問いに育てています。
- 演習・ゼミ・卒業論文と教職課程を年次順に並べ、締めでは札の一語に立ち止まった経験と、冒頭の国語教員という目標を結び直しています。