芸術学部・美大の志望理由書

芸術学部・美大の志望理由書の書き方と例文3本

芸術学部・美大の志望理由書で問われるのは、「絵を描くのが好き」「ものづくりが好き」という気持ちの先に、制作や鑑賞の中で自分が確かめた問いがあるかどうかです。ここでは、芸術系の志望理由書で見られる3つの観点を説明したうえで、デザイン学科(800字)・美術学科(600字)・芸術学科(400字)の例文と、「感性を磨きたい」のような抽象的な言葉で埋まった文章の直し方を紹介します。美大と総合大学の芸術学部での書き分け、ポートフォリオや実技試験との関係、デザイナーや作家以外の進路、面接で聞かれることは、後半のよくある質問の章にまとめました。

芸術学部・美大の志望理由書を3ステップで書く

  1. 1
    芸術学部・美大の志望理由書は、描き続けているモチーフや、思うように伝わらなかった掲示物など、制作や鑑賞の中で引っかかった一点を選び、自分で試したことと結果から書き始めます。
  2. 2
    学科を選ぶ理由は、その問いに、形・色・情報の整理で人の困りごとを解くデザイン、自分の表現を突き詰める美術、作品を研究する芸術学のどの方法で答えたいかで説明します。
  3. 3
    志望理由書の後半は、基礎の実技や演習から専攻、卒業制作や卒業研究へと進む4年間の計画を書き、ポートフォリオの作品ともつながる最初の問いに戻って締めます。

このページが向いている人:美大・芸大や総合大学の芸術学部で、デザイン・美術・映像・芸術学などを学びたい高校生に向けて書いたページです。総合型選抜でも学校推薦型選抜でも、一般選抜で志望理由書を求められた場合でも使えます。「絵が好き」から先が書けない人、ポートフォリオや実技試験と志望理由書の関係で迷っている人、デザインと美術のどちらに進むか決めかねている人、実技の経験がなく芸術学を志望する人に役立ちます。

芸術学部・美大の志望理由書で見られる3つのこと

芸術学部・美大の志望理由書では、作品の上手さや賞の数より、制作や鑑賞の中で何に気づき、何を試してきたかが重く見られます。次の3点は、デザイン・美術・映像・芸術学のどの学科を志望する場合にも当てはまります。

  1. 一

    「絵が好き」の先に、制作や鑑賞の中で確かめた問いがあるか

    芸術学部・美大を志望する人の多くは、絵を描くことやものづくりが好きです。そのため志望理由書では、「好き」の先に、制作や鑑賞の中で自分が確かめた問いがあるかが見られます。何を作り、どこで行き詰まり、それを越えるために何を試したのかを、順に書いてください。同じ花瓶を何十枚描いても影の色が決まらなかった、ポスターの文字を大きくしたのに遠くからは読みにくいままだった、美術館で1枚の絵の前から動けなくなった理由を考えた、といった体験で十分です。描いた枚数や変えた条件を書き、まだ答えの出ていない点を、大学で学びたいことの出発点にしてください。

  2. 二

    学科の違いと、自分の関心が対応しているか

    芸術系の学科は、何のために、どんな方法で作るか、あるいは研究するかで分かれています。人や社会の困りごとを形・色・情報の整理で解くのがデザイン、絵画・彫刻・工芸などで素材や技法と向き合い、自分の表現を突き詰めるのが美術です。映像・メディア系の学科は、動く映像や音を組み合わせた表現を扱います。芸術学は、作品がいつどのように作られ、どう見られてきたのか、美しいとはどういうことかを、美術史や美学の方法で研究する学問で、実技が中心ではありません。自分の問いがどの方法に近いかを、1文で示してください。同じ学科名でも、美大・芸大と総合大学の芸術学部とでは、実技の比重や他学部の授業の取りやすさが違うことがあります。学科の名前や構成とあわせて、募集要項で確認しましょう。

  3. 三

    ポートフォリオ・実技・面接と同じ軸で、4年間の学びを描けているか

    美大・芸大では、実技試験を課したり、ポートフォリオ(作品集)の提出を求めたりする入試が多くあります。志望理由書に書いた問いと、ポートフォリオに入れる作品、面接で話す制作の意図が同じ軸でつながっていれば、読み手はあなたの関心を一つの流れとして受け取れます。志望理由書の後半には、4年間の学びを順に書きます。多くの大学では、基礎の実技や演習で制作や研究の土台を固めてから専攻へ進み、4年次に卒業制作や卒業研究に取り組みます。最後に、学びを生かす進路の見通しを一言添えてください。専攻を選ぶ時期や授業の名前は大学によって違うため、シラバスや大学の案内で確かめましょう。

芸術学部・美大の志望理由書 例文3本

デザイン学科は日本語教室で出会った小学生のために作り直した持ち物表、美術学科は2年間描き続けた祖父の手、芸術学科は教科書と美術館で背景の色が違って見えた西洋画を題材にしました。芸術学科の例文は、実技の経験がなくても、作品を見て調べる側の問いから芸術学部を志望する書き方の例です。例文はすべて「です・ます」の敬体で、志望する大学を「貴学」と呼ぶ形で書いています。

1

デザイン学科・総合型選抜(日本語教室の小学生のために作り直した持ち物表から)

794 字

私は将来、学校や自治体が配る案内物を、言葉が通じにくい人にも伝わる形に設計するデザイナーになりたいと考えております。そのために視覚伝達デザインを学びたく、貴学デザイン学科を志望いたします。高校1年から手伝っている地域の日本語教室に、学校から配られるお便りを読めず、忘れ物を重ねている小学3年の女の子がいました。私はお便りの文章から持ち物を拾い出し、曜日ごとの枠と絵記号で示す週間表に作り直しました。絵記号は12個を描き分け、曜日ごとに枠の色を変えて、冷蔵庫に貼れる大きさにまとめました。毎週の教室で忘れ物の回数を尋ねて記録すると、表を使う前の4週間は9回、使い始めてからの4週間は3回でした。ところが、残る3回のうち2回は上履きでした。お母様に伺うと、前に住んでいた国の学校には室内で履き替える習慣がなく、私の描いた靴の絵を、外で履く靴のことだと受け取っていたと分かりました。形を分かりやすく描いても、見る人がその物を知らなければ伝わらないのです。そこで、上履きの絵の横に、昇降口で靴を履き替える場面を描き足すと、その後の4週間で忘れ物は1回になりました。生活の習慣が違う人にも同じ意味で伝わる形は、どうすれば作れるのか。貴学を選んだのは、1年次の『△△演習』で色と形の基礎を学んだうえで、2年次から視覚伝達デザインを専攻でき、試作を使う人に見てもらいながら改良する授業があるからです。また、〇〇教授が研究されている公共の場の案内表示は、私の問いと重なります。ポートフォリオには、2つの版の週間表と、版ごとに数えた忘れ物の回数を載せました。入学後は色彩と文字の組み方を学び、4年次の卒業制作では、日本語を学び始めた家庭でも迷わずに読める学校のお便りのひな形を、教室の親子と一緒に作る計画です。言葉の違いで忘れ物を重ねる子どもを減らすため、貴学で視覚伝達デザインを学びたいと考えております。

800字・総合型選抜(デザイン学科)

この例文のポイント

  • 忘れ物が9回から3回、さらに1回へと減った記録を版ごとに残しており、作ったものが伝わったかどうかを自分で確かめたことが分かります。
  • 上履きの絵が伝わらなかった理由をその子の家族に尋ね、形の分かりやすさだけでは届かないという気づきを、視覚伝達デザインで答えたい問いにしています。
  • ポートフォリオに載せた週間表と本文の内容をそろえ、案内物のデザイナーという進路と卒業制作の計画まで、総合型選抜の面接で一続きに話せる構成にしています。
2

美術学科・学校推薦型選抜(2年間描き続けた祖父の手から)

592 字

私は、何を描き込み、何を省くかで、その人らしさを画面に残す方法を探りたいと考え、貴学美術学科を志望いたします。高校1年の春から、大工だった祖父の手を毎週日曜に鉛筆で描き続け、2年間で約90枚になりました。初めは、しわや爪の割れを細かく描き込むほど祖父の手に近づくと考えていました。ところが、3時間かけて描いた1枚を見た祖母は、「上手だけど、おじいちゃんの手じゃないね」と言いました。そこで同じ構図を3時間、30分、3分の3通りで描き比べ、美術部員と家族の計11人に、どれが祖父の手らしいかを尋ねると、8人が3分で描いた線だけの1枚を選びました。描き込むほど似なくなるのはなぜか。正確な形とは別に、線の速さや迷いの中に、その人らしさが表れているのではないか。これが今の私の制作を貫く問いです。部長を務める美術部では、この3枚を校内展に並べ、来場者にも1枚を選んで理由を書いてもらいました。貴学を志望するのは、1年次の『△△演習』で人体の素描を重ね、2年次からの油画専攻で、その線を筆づかいへ広げられるからです。人物の顔をあえて描かない〇〇教授の作品にも、強く引きつけられました。入学後は素描と油彩の基礎を固め、4年次の卒業制作では、祖父の手を大きな画面に描き、省いた部分にもその人が残る絵を目指します。祖父の手を描いた90枚の先にある1枚を、貴学で4年間かけて探したいと考えております。

600字・学校推薦型選抜(美術学科)

この例文のポイント

  • 2年間で約90枚という継続と、3通りの描き方を11人に見比べてもらった結果で、同じモチーフに向き合い続けた跡を示しています。
  • 「おじいちゃんの手じゃない」という祖母の一言を、線の速さや迷いという絵画の言葉で問いに言い直し、美術学科で突き詰めたい表現を明らかにしています。
  • 部長を務める美術部での展示から、素描と油画の授業、卒業制作の計画までを順に結び、推薦入試で重く見られる、高校での活動と志望の一貫性を伝えています。
3

芸術学科・一般選抜(教科書と美術館で色が違って見えた西洋画から)

391 字

私は、同じ作品を実物と複製で見たときの違いを、美学と美術史の方法で考えたいと思い、貴学芸術学部芸術学科を志望いたします。きっかけは、美術の教科書に載っていた西洋画を、地元の美術館で初めて実物で見たことです。教科書では暗い茶色に見えた背景に、実物では深い緑が塗り重ねられていました。家にある画集2冊と教科書、美術館の絵はがきを並べると、背景の色は4つとも違いました。私たちは名画の多くを複製で知っていますが、複製で見た作品と実物は、同じ作品と言えるのでしょうか。作品を作るより見て考えることに引かれてきた私は、見え方の違いを言葉にして確かめる学問があると知り、芸術学科を選びました。『△△演習』で美術館の作品を前にして記述する訓練を積めることが、貴学を志望する理由です。入学後は美学と西洋美術史を学び、卒業研究では、複製が作品の受け取られ方をどう変えるかを研究したいと考えております。

400字・一般選抜(芸術学科)

この例文のポイント

  • 教科書・画集2冊・絵はがきの4つを並べて比べた具体があり、実技がなくても、自分の目で確かめた跡を示せています。
  • 実物と複製は同じ作品かという問いを、美学と美術史で扱う問いとして立て、研究が中心の芸術学科を選ぶ理由にしています。
  • 字数の少ない一般選抜でも、演習・美学と西洋美術史・卒業研究を一つずつ挙げ、入学後の学びの流れを残しています。

※ 上記は例文です。教授名・授業名・エピソードはご自身の情報に書き換えてください。

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芸術学部・美大の志望理由書でよくあるNG

一NG

「絵を描くのが好き」「ものづくりが好き」で止まっている

好きな気持ちは、芸術学部・美大を志望する自然な出発点です。ただ、「好き」で文章が止まると、あなたが何を作り、何を確かめたいのかが伝わらず、デザインと美術のどちらを、なぜ学びたいのかも読み手には分かりません。好きになった場面で、何を見て、何に引っかかり、どう手を動かしたのかまで書いてください。

書き直し例

「小さいころから絵を描くのが好きでした」で止めず、「雨の日の窓を描こうとして、水滴そのものより、水滴に映る外の景色を描いたときに初めて窓が濡れて見えると気づき、見えたものをどう選んで描くかを学びたいと考えました」のように、描く中で気づいたことと問いまで書きます。

二NG

有名な作家やデザイナーへの憧れだけを書いている

憧れの作家やデザイナーがいることは、志望のきっかけとして書いて構いません。ただ、経歴や作品の紹介で字数を使うと、あなた自身が何を作りたいのかが見えなくなります。「あの人のような作品を作りたい」とだけ書くと、まねをしたいだけだと受け取られることもあります。憧れた作品のどこに引かれ、自分で何を試したのかまで書きます。

書き直し例

「憧れのデザイナーのような仕事がしたい」で終わらせず、「好きなデザイナーが手がけた本の表紙を10冊並べると、どれも書名の文字が小さく余白が広いと気づき、文字の大きさを変えた表紙を3案作って比べました。余白が人の目をどう導くのかを学びたいと考えております」のように、作品の中で気づいたことと、自分で試したことを書きます。

三NG

受賞歴や制作した作品の一覧を並べている

賞の名前や作品のタイトルを並べると、実績は伝わっても、その作品で何を考え、何を試したのかが分かりません。受賞歴は、活動報告書などの別の書類やポートフォリオで伝えられる場合もあります。志望理由書では作品を1つに絞り、制作の途中で迷ったことと、それをどう越えたのかを書いてください。

書き直し例

「県の高校美術展で入選し、市のポスターコンクールでも佳作をいただきました」と並べる代わりに、「入選した塑像では、片足に体重をかけて立つ人の重心が決まらず、粘土の足を4回作り直しました。人の体の重さが感じられる形のつくり方を、彫刻の基礎から学びたいと考えております」のように、1つの作品で試したことを書きます。

四NG

「感性を磨きたい」「表現力を高めたい」など、抽象的な言葉で埋めている

「感性」「表現力」「世界観」といった言葉は、芸術系の志望理由書でよく使われますが、それだけでは、何が見えるようになり、何を作れるようになりたいのかが分かりません。面接で「あなたの言う感性とは何ですか」と聞かれて、答えに詰まる原因にもなります。抽象的な言葉は、具体的な場面や手の動きに置き換えてください。

書き直し例

「感性を磨き、表現力を高めたい」ではなく、「夕方の校舎を描くたびに影を黒で塗り、画面が重くなりました。影の中にある青や紫を見分けて色を置けるよう、観察して描く力を、素描から鍛え直したいと考えております」のように、何をできるようになりたいのかを書きます。

五NG

デザインを「おしゃれ」「かっこいい」で語り、美術の志望理由と混ざっている

デザイン学科の志望理由書で「おしゃれなものを作りたい」「自分の世界観を表現したい」と書くと、見た目の好みや自分の表現が中心に見え、美術学科に向けた文章と区別がつきません。デザインは、使う人や見る人の困りごとから出発し、形・色・情報の整理で解く分野です。デザインを志望するなら、誰の、どんな困りごとを解きたいのかを先に書きます。

書き直し例

「おしゃれでかっこいいデザインで、自分らしさを表現したい」ではなく、「商店街の夏祭りのチラシを2案作り、10人ずつに配って翌日に尋ねると、日時を覚えていた人は、写真を大きく入れた案で3人、日時と場所を上にまとめた案で8人でした。目的に合わせて情報を並べる方法を学びたいと考えました」のように、見る人の反応から書き起こします。

よくある質問

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