理学部の志望理由書

理学部の志望理由書の書き方と例文3本

理学部の志望理由書で問われるのは、「理科が好き」「数学が得意」という気持ちを、自分の目と手で確かめた「なぜ」にまで掘り下げられているかです。ここでは、理学部が志望理由書で重視する3つの観点を示したうえで、物理学科(800字)・生物学科(600字)・数学科(400字)の例文と、「宇宙のロマン」のような感想で終わる文章の直し方を紹介します。工学部ではなく理学部を選ぶ理由、実験のない数学科で書くこと、研究者以外の進路、面接や口頭試問への備えは、よくある質問の章で扱っています。

理学部の志望理由書を3ステップで書く

  1. 1
    理学部の志望理由書は、水の凍り方や空の色、数の並びのきまりなど、身近な「なぜ」を1つ選び、自分で観察・測定・計算して確かめた結果から書き始めます。
  2. 2
    理学部を選ぶ理由は、その「なぜ」に数学・物理・化学・生物・地学のどの学科の方法で答えたいのかと、役に立つかより先に仕組みを知りたいという問いの向きで説明します。
  3. 3
    志望理由書の後半は、基礎科目から実験・演習やセミナー、卒業研究、大学院へと続く学びの計画を書き、最初に挙げた「なぜ」に戻って締めます。

このページが向いている人:数学科・物理学科・化学科・生物学科、地球惑星科学などの地学系の学科を受ける高校生を想定したページです。総合型選抜・学校推薦型選抜はもちろん、一般選抜で志望理由書の提出を求められた人も使えます。「理科が好き」から先が書けない人、工学部や農学部と迷っている人、数学科志望で、実験の体験がなく何を書けばよいか分からない人、面接での口頭試問に備えたい人に役立ちます。

理学部の志望理由書で見られる3つのこと

理学部の志望理由書では、知識の量より、自然や数の不思議を自分の手で確かめようとしたかどうかが重く見られます。次の3点は、数学・物理・化学・生物・地学のどの学科に進む場合にも当てはまります。

  1. 一

    「理科が好き」で終わらず、自分で確かめた「なぜ」があるか

    理学は、役に立つかどうかを問う前に、自然や数がなぜそのようにふるまうのかを明らかにしようとする学問です。そのため理学部の志望理由書では、「理科が好き」「宇宙に興味がある」という気持ちの先に、自分で観察したり測ったりした中から生まれた問いがあるかが見られます。月の出が毎日少しずつ遅れることを1か月の記録で確かめた、紫キャベツの煮汁が酢や重曹で色を変えるのを比べた、教科書の公式どおりにならない実験結果が出た、といった身近な体験で十分です。何回測り、どんな値が出たのかを数字で書き、教科書の説明と合わなかった点があれば、そこを問いの出発点にしてください。

  2. 二

    学科を選ぶ理由が、問いに答える方法と対応しているか

    理学部の学科は、何を対象に、どんな方法で答えを出すかによって分かれています。数や図形の性質を証明で確かめるのが数学科、物質や宇宙のふるまいを少数の法則で説明するのが物理学科、原子や分子の構造と反応から物質を理解するのが化学科、遺伝子や細胞から生態系までの生命現象を扱うのが生物学科、地震・火山・気象・海洋や惑星を扱うのが地学系の学科です。同じ紅葉でも、葉の色素の分子に注目すれば化学、色づく時期を決める仕組みに注目すれば生物というように、問いの立て方で学科は変わります。自分の問いにどの学科の方法で近づきたいのかを1文で示してください。地学系を地球惑星科学科、生物系を生命科学科と呼ぶ大学や、理学科の中にコースを置く大学もあるため、志望校の学科構成は募集要項で確認しましょう。

  3. 三

    基礎科目から卒業研究、大学院までの学びを見通せているか

    理学部では、1〜2年次に微分積分・線形代数や、物理・化学・生物・地学の基礎となる科目を学び、学年が進むにつれて専門科目と実験・演習が増えていきます。4年次には研究室やセミナーに所属して卒業研究に取り組むのが一般的で、数学科では、専門書を少人数で読み進め、証明を黒板で説明するセミナーが中心になります。理学部の中には、卒業生の半数以上が大学院の修士課程へ進み、研究を深める大学もあります。志望理由書では、固めたい基礎、取り組みたい実験や学びたい分野、卒業研究のテーマを順に書き、大学院まで考えているならその計画も一言添えると、一つの問いを長く追い続ける姿勢が伝わります。卒業研究の形や大学院への進み方は大学によって違うため、学部と大学院の案内で確かめてください。

理学部の志望理由書 例文3本

物理学科は冷凍庫で凍らなかったペットボトルの水、生物学科は窓辺で光の方へ曲がった豆苗、数学科は2の累乗を割った余りの周期を題材にしました。数学科の例文は、実験ではなく、手で繰り返した計算と証明から問いを立てる書き方の例です。どの例文も「です・ます」の敬体で書き、志望する大学は「貴学」と呼んでいます。

1

物理学科・総合型選抜(冷凍庫で凍らなかったペットボトルの水から)

796 字

水は0℃で凍ると習ったのに、0℃を下回っても凍らずにいる水があるのはなぜか。この問いを、物質の状態が変わる仕組みとして理解するため、貴学理学部物理学科を志望いたします。きっかけは高校1年の冬、冷凍庫で冷やしすぎたペットボトルの水が、取り出して振った瞬間に白く凍り始めたことです。調べると、0℃より低くても液体のままでいる状態を過冷却と呼ぶと分かりました。そこで試験管に精製水を入れ、氷と食塩を混ぜた寒剤で冷やしながら、温度を10秒ごとに記録しました。水は0℃を下回っても凍らず、白く濁り始めると温度は一気に0℃まで上がり、すべて凍るまで0℃のままでした。ところが、同じ試験管と同じ水で20回くり返すと、凍り始めた温度は氷点下2.3℃から7.1℃までばらつきました。温度計を替えて測っても、ばらつきの幅は変わりませんでした。条件をそろえても、凍り始める温度が毎回違うのはなぜか。物理の入門書を読み、凍り始めるには水の中に氷の結晶のもとになる小さな核が生まれる必要があり、それがいつ起きるかは確率で決まると知りました。さらに、無数の分子の動きから凍るという全体の変化を説明する統計力学に出会い、この分野を学ぶことが目標になりました。今は水の量を変えて、凍り始める温度のばらつき方がどう変わるかを調べています。貴学を志望する理由は、温度を精密に制御した測定を2年次の『△△実験』で経験できることと、〇〇教授が、液体が固体に変わり始める過程を研究されていることです。入学後は、微分積分・線形代数と力学・電磁気学を1年次に身につけ、2年次以降に熱力学と統計力学へ進みます。4年次は〇〇教授の研究室で卒業研究に取り組み、大学院に進んで、凍り始める瞬間の仕組みをさらに追究する計画です。冷凍庫で凍らずにいた水の謎を、いつか自分の手で法則として説明できるよう、貴学で物理学を基礎から学びたいと考えております。

800字・総合型選抜(物理学科)

この例文のポイント

  • 書き出しを「なぜ0℃を下回っても凍らないのか」という問いにし、理学部が重く見る「なぜ」を最初の一文で示しています。
  • 同じ条件で20回測っても凍り始める温度がばらつき、温度計を替えても幅が変わらなかったことを書き、測定の誤差では説明できない問いだと示しています。
  • ばらつきの理由を確率と統計力学に結びつけ、水の量を変えて調べ続けている今の取り組みから卒業研究、大学院までを一本の線で描き、総合型選抜の面接で掘り下げやすくしています。
2

生物学科・学校推薦型選抜(窓辺で光の方へ曲がった豆苗から)

578 字

私は、植物が光を感じ取って体の形を変える仕組みを解き明かしたいと考え、貴学理学部生物学科を志望いたします。きっかけは、台所の窓辺で育てていた豆苗の茎が、2日で窓の方へ大きく曲がっていたことです。光のどの色に反応しているのかを確かめるため、生物部の活動として、暗い箱の中で、明るさをそろえた青と赤のLEDを片側から当て、豆苗を10本ずつ3日間育てました。茎の曲がりは、青では平均38度でしたが、赤では平均4度にとどまりました。調べると、植物には青い光を受け取るフォトトロピンというタンパク質があり、光の当たらない側にオーキシンが移ってその側がよく伸びるため、茎が光の方へ曲がると分かりました。では、光を受け取ってから、オーキシンが影の側へ運ばれるまでに、細胞の中では何が起きているのでしょうか。育て方を工夫するより、この仕組みそのものを知りたいと考え、農学部ではなく理学部の生物学科を選びました。貴学を志望するのは、『△△実験』で植物の細胞を観察しながら遺伝子のはたらきを調べる方法を学べ、〇〇教授が植物の光への反応を研究されているからです。入学後は細胞生物学と分子生物学を学び、4年次は〇〇教授の研究室で、光の向きがオーキシンの流れを変える仕組みを研究することが目標です。窓辺で曲がった豆苗から始まった問いを追い続けるため、貴学で学びたいと考えております。

600字・学校推薦型選抜(生物学科)

この例文のポイント

  • 窓辺で曲がった豆苗という身近な観察から、青と赤のLEDで条件を変えて確かめるまでを、高校の生物部の活動として順に書いています。
  • 教科書で学ぶフォトトロピンとオーキシンの説明の先に、光を受けてからオーキシンが運ばれるまでの過程という、まだ自分では答えられない問いを置いています。
  • 育て方の工夫ではなく仕組みを知りたいという理由で、農学部ではなく理学部を選んだことを示し、学校推薦型選抜で見られる学部への理解を伝えています。
3

数学科・一般選抜(2の累乗を割った余りの周期から)

388 字

私は、数の性質を証明によって確かめる力を身につけたいと考え、貴学理学部数学科を志望いたします。きっかけは、2の累乗を7で割った余りが2、4、1と繰り返すと気づいたことです。割る数を変えて手で計算すると、5、7、11、13などの素数では、周期がいつも割る数より1小さい数の約数になりました。ところが9で割ると周期は6で、8の約数になりません。調べると、周期は、割る数より小さい自然数のうち割る数と互いに素なものの個数の約数になると分かりました。9ならその個数は6で、素数なら割る数より1小さい数になるため、最初のきまりもこの一部でした。しかもこの性質は「群」という考え方を使えば数行で証明でき、何十通りの計算より確かな方法があることに驚きました。貴学の『△△演習』で証明を書いて発表する訓練を積み、〇〇教授のもとで整数論を学び、4年次のセミナーで深く探究したいと考えております。

400字・一般選抜(数学科)

この例文のポイント

  • 実験の代わりに、手で計算して見つけたきまりを出発点にし、数学科の志望理由書でも自分で確かめた跡を示しています。
  • 9で割るときまりが崩れた反例から、より大きなきまりにたどり着くまでを書き、予想と証明を重ねる数学の進め方への理解を伝えています。
  • 字数の少ない一般選抜の志望理由書でも、証明への驚き、志望校の演習と教員、4年次のセミナーまでを短くつなぎ、その大学で学ぶ理由を残しています。

※ 上記は例文です。教授名・授業名・エピソードはご自身の情報に書き換えてください。

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理学部の志望理由書でよくあるNG

一NG

「理科が好き」「宇宙のロマンに惹かれた」で止まっている

理科への好奇心は理学部を志望する自然な出発点ですが、「好き」「ロマンがある」という感想だけでは、何を解き明かしたいのかが伝わりません。宇宙や生命のような大きなテーマほど言葉だけが大きくなり、どの学科で何を学びたいのかが見えにくくなります。好きになった場面で、自分が何を見て、何を不思議に思ったのかまで書いてください。

書き直し例

「宇宙のロマンに惹かれました」で止めず、「小さな望遠鏡で木星を毎晩スケッチすると、そばに並ぶ衛星の位置が日ごとに変わっていました。衛星が回る周期と距離から木星の質量を求められると知り、天体の動きを法則で説明する力を身につけたいと考えました」のように、見たものと問いまで書きます。

二NG

ノーベル賞や有名な研究者への憧れだけを書いている

ノーベル賞のニュースや研究者の伝記に心を動かされたことは、理学部を志望するきっかけとして書いて構いません。ただ、受賞者の経歴や研究の紹介で字数を使うと、あなた自身が何を知りたいのかが見えなくなります。憧れた研究のどこに疑問を持ち、自分で何を調べたのかまで書きます。

書き直し例

「ノーベル賞を取るような研究者になりたい」で終わらせず、「ノーベル物理学賞につながった、ニュートリノに質量があるという発見について調べ、ほとんど何とも反応しない粒子の性質を、どうやって観測で確かめたのかを知りたくなりました」のように、研究の中身への疑問を書きます。

三NG

ニュースで見た難しい用語を並べている

「量子コンピュータ」「ゲノム編集」「ダークマター」といった言葉は、科学のニュースでよく目にするため、志望理由書にも入れたくなります。ただ、用語を並べるだけでは、あなたがその言葉のどこに引っかかったのかが伝わりません。理学部の面接では、書いた用語の意味を高校で学んだ範囲で説明するよう求められることもあります。使うなら1つに絞り、自分の言葉で説明できるところまで書きます。

書き直し例

「ダークマターや量子力学など最先端の物理を学びたい」ではなく、「銀河の外側の星も内側の星と同じくらいの速さで回っていると知り、見えている星の質量だけでは説明できない理由を、力学の基礎から理解したいと考えました」のように、1つの事実に絞って書きます。

四NG

「数学(理科)が得意だから」を学科選びの理由にしている

得意科目を伸ばしたい気持ちは自然ですが、高校のテストで点が取れることと、大学で学ぶ内容とは重ならない部分があります。たとえば大学の数学では、速く正確に計算する力より、定義から論理を積み上げて証明する力が中心になります。「得意だから」だけを理由にすると、学科の中身を知らずに選んだと読まれます。得意になる過程で何に引っかかり、何を確かめたくなったのかを書きます。

書き直し例

「数学が得意なので数学科を志望します」ではなく、「三角形の内角の和が180度になる証明を授業で学んだあと、球面に描いた三角形では和が180度を超えると知り、前提を変えると結論がどう変わるのかを確かめたくなりました」のように、得意の中で生まれた問いを書きます。

五NG

「人の役に立つ技術を開発したい」と書き、工学部の志望理由に見える

社会の役に立ちたいという思いは大切ですが、新しい製品や技術をつくることを中心に書くと、読み手には工学部や農学部、薬学部に向けた文章に見えてしまいます。理学部の研究は、すぐに使い道が見えなくても、自然の法則や仕組みを明らかにすること自体を目的にしています。役立てたい気持ちを書くなら、その前に、解き明かしたい原理や仕組みを置いてください。

書き直し例

「病気の治療に役立つ薬を開発したい」ではなく、「体の多くの細胞は分裂できる回数に限りがあると知り、その回数を細胞がどのように数えているのかを明らかにしたいと考えました。仕組みが分かれば、いずれ医療にもつながると考えております」のように、仕組みの解明を先に書きます。

よくある質問

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