農学部・生命科学部の志望理由書

農学部・生命科学部の志望理由書の書き方と例文3本

農学部・生命科学部の志望理由書では、「食料問題を解決したい」「生き物が好き」という思いを、自分の目で確かめた事実と、学科で解きたい問いにまで具体化できているかが問われます。このページには、農学部系の志望理由書で評価を分ける3つの観点、農学科(800字)・応用生命化学科(600字)・森林科学科(400字)の例文、「食料自給率を上げたい」で止まる文章などのNG例と書き直し例を載せました。家が農家でない人の題材の見つけ方や、理学部生物学科との書き分けは、後半のよくある質問にまとめています。

農学部・生命科学部の志望理由書を3ステップで書く

  1. 1
    農学部・生命科学部の志望理由書は、田畑や台所、森など身近な現場で自分が見たことや数えたことを1つ選び、そこから生まれた問いで書き始めます。
  2. 2
    次に、その問いが生産・食品・生命化学・環境・経済のどの領域に当たるかを示し、学科を選ぶ理由と将来の進路を結びつけます。
  3. 3
    後半には、附属農場や演習林での実習、学生実験、研究室での研究という順で入学後の計画を書き、結びでは書き出しの現場の話に戻ります。

このページが向いている人:農学部、生命科学部、応用生物系の学部(農学・応用生命化学・食品・森林・農業経済など)を志望する高校生向けのページです。入試方式は問わず、総合型選抜、学校推薦型選抜、志望理由書の提出がある一般選抜のどれにも使えます。「食料問題に関心がある」の先が書けない人、家が農家ではなく題材が見つからない人、理学部生物学科と迷っている人のほか、面接対策として、農学部を選ぶ理由を言葉にしておきたい人にも向いています。

農学部・生命科学部の志望理由書で見られる3つのこと

農学部・生命科学部の志望理由書では、農業や生き物への思いの強さよりも、自分が見た現場からどんな問いを立てたかが重く見られます。次の3点は、志望する学科が農学・応用生命化学・食品・森林・農業経済のどれであっても押さえておきたい観点です。

  1. 一

    自分の関心が、農学の広い領域のどこにあるかを示せているか

    農学は、作物や家畜を育てる生産、食品の成分や加工、微生物や酵素を扱う生命化学、森林・土・水などの環境、食料の流通や農業経営を扱う経済まで、生き物と人の暮らしに関わる幅広い分野を含みます。同じ米でも、暑さで品質が落ちる理由を探るなら作物学、米麹で甘酒をつくるときに働く麹菌の酵素に目を向けるなら応用生命化学、米の値段や売り方を考えるなら農業経済が入り口です。志望理由書では、自分の問いがこの中のどこに当たるかを示すと、学科を選んだ理由が自然に伝わります。学科の名前も「応用生命化学科」「応用生物化学科」など大学ごとに違うため、どの学科で何を学べるかは、学部案内の学科紹介や授業科目の一覧で確かめておきましょう。

  2. 二

    「食の安全」「食料自給率」を、自分が見た現場の言葉に置き換えているか

    食料自給率の低さや食の安全、地球温暖化は、農学部の志望理由書で多くの人が書くテーマです。どれも大切な問題ですが、ニュースで知った言葉のままでは、あなたにしか書けない内容になりません。スーパーの産地表示、家で漬けたぬか漬けの味の変化、近所の田んぼの稲の様子など、自分の目で確かめた場面に置き換えてください。そのうえで、棚に並ぶ国産品の数や毎日の気温など、自分で数えたり測ったりした数字を一つ添えると、問いが具体的になり、面接でも話を広げやすくなります。

  3. 三

    農場実習や学生実験を経て研究室へ進む、入学後の道筋を示せているか

    農学部には附属の農場や演習林を持つ大学が多く、1〜2年次は実習で作物を育てたり森に入ったりしながら、生物・化学や統計の基礎を学びます。2〜3年次には専門科目と学生実験で分析や培養の手法を身につけ、研究室に入って卒業研究を進めるのは3〜4年次というのがよくある流れです。志望理由書では、実習で確かめたいこと、実験で身につけたい手法、研究室で取り組みたいテーマを、この順に書くと入学後の姿が伝わります。実習の時期や内容、研究室に入る学年は大学によって違うので、シラバスや学部案内を読み、自分の問いと重なる授業と研究室を1つずつ挙げてください。

農学部・生命科学部の志望理由書 例文3本

農学科は祖父の田んぼでとれた米の白く濁った粒、応用生命化学科は生物の授業で使った発酵管と酵母、森林科学科は森林ボランティアで見比べた、間伐した林と手つかずの林を題材にしています。3本とも、提出する志望理由書と同じ敬体(です・ます調)で書き、志望先の大学は「貴学」と呼んでいます。

1

農学科・総合型選抜(祖父の米に増えた白く濁った粒から)

795 字

私は将来、県の農業試験場の研究員として、夏の暑さの中でも品質の落ちない米づくりの技術を開発したいと考えております。そのために作物学を中心に学びたく、貴学農学部農学科を志望いたします。きっかけは、祖父の田んぼでとれた米に、白く濁った粒が増えたことです。猛暑だった一昨年、祖父の米は検査で等級が下がりました。玄米を100粒ずつ5回数えると、白く濁った粒は平均23粒ありました。調べると、これは白未熟粒と呼ばれ、穂が出た後に暑い日が続くと粒の中にでんぷんが詰まりきらず、すき間で光が散るために白く見えると分かりました。そこで高校2年の春から、同じ品種の苗をバケツ6個で育て、田植えの時期を5月上旬と6月中旬に3個ずつ分けました。穂が出たのは7月末と8月下旬で、白未熟粒は100粒あたり平均24粒と7粒でした。実が育つ時期を暑さの盛りから外すと、数は3分の1以下に減ったのです。ところが祖父に結果を見せると、「この辺りは田に水を引く時期を地区でそろえているから、一軒だけ遅らせるのは難しい」と言われました。田植えの時期は、稲の都合だけでは決められなかったのです。暑さを避ける作り方と暑さに強い品種を、地域の条件に合わせてどう組み合わせればよいのか。この問いに、稲の体の仕組みと栽培の両面から取り組みたいと考えました。貴学を選んだのは、1年次から附属農場の『△△実習』で、稲を田植えから収穫まで自ら育てられるからです。また、〇〇教授の研究テーマである、穂が出た後の高温が米の品質に与える影響は、私の問いと深く重なります。入学後は作物学と植物生理学の基礎を固め、4年次は〇〇教授の研究室で、暑い夏でも米粒にでんぷんがしっかり詰まる栽培の条件を研究する計画です。祖父の米を1粒ずつ数えた日から始まった問いを、地域の田んぼで暑さに負けない米づくりにつなげるため、貴学農学部農学科で学びたいと考えております。

800字・総合型選抜(農学科)

この例文のポイント

  • 祖父の米を100粒ずつ数えた結果を出発点に、白未熟粒という現象の名前と、白く見える理由まで自分で調べた過程を書いています。
  • バケツで田植えの時期を分けた比較で、白未熟粒が100粒あたり24粒から7粒に減ったことを示し、暑さとの関係を自分の手で確かめています。
  • 地区で水を引く時期をそろえているという祖父の言葉から、技術は地域の条件の中で使われるという視点を示し、総合型選抜の面接で深めやすい問いにしています。
2

応用生命化学科・学校推薦型選抜(発酵管で確かめた糖の濃さと酵母の働きから)

595 字

私は将来、食品メーカーの研究者として、酵母などの微生物の力を生かした食品づくりに携わりたいと考えております。微生物と酵素の働きを学ぶため、貴学農学部応用生命化学科を志望いたします。高校2年の生物の授業で、発酵管を使って酵母の発酵を確かめたことが出発点です。糖が多いほど二酸化炭素も多く出ると予想し、課題研究でグルコースの濃さを2%から40%まで5段階に変え、20分間にたまる気体の量を比べました。すると気体は10%で最も多く、40%では10%のときの4分の1ほどでした。調べると、周りの糖が濃すぎると酵母の細胞から水が奪われ、働きが鈍ると分かりました。一方で、菓子パンのように糖の多い生地には、糖に強い酵母が使われていることも知りました。同じ酵母の仲間でも、糖の濃さへの強さはなぜ違うのか。その違いを遺伝子や酵素の働きから説明できれば、塩分の多いみそやしょうゆの醸造など、酵母にとって厳しい条件での発酵を安定させる技術にもつながるはずです。貴学を志望するのは、2年次の『△△実験』で微生物の培養と酵素の測定を基礎から学べ、〇〇教授が酵母のストレスへの強さを研究されているからです。入学後は有機化学と生化学の基礎を固め、4年次には〇〇教授の研究室で、糖の濃い環境でも酵母が働き続ける仕組みを研究いたします。発酵管にたまった気体の差から生まれた問いを深めるため、貴学で学びたいと考えております。

600字・学校推薦型選抜(応用生命化学科)

この例文のポイント

  • 糖が多いほどよく発酵するという予想が外れた結果をそのまま書き、細胞から水が奪われるという仕組みへと調べを進めています。
  • 同じ酵母でも糖への強さが違うという問いを、遺伝子や酵素の働きから考える応用生命化学科の学びに結びつけています。
  • 授業の実験から課題研究、大学の研究室までを一本の線でつなぎ、学校推薦型選抜で見られる高校での学びの深まりを示しています。
3

森林科学科・一般選抜(間伐した林と手つかずの林で下草を数えた経験から)

395 字

私は将来、森林組合の技術者として、手入れの遅れた人工林を、雨で土が流れにくい森に変えたいと考え、貴学農学部森林科学科を志望いたします。きっかけは、森林ボランティアで間伐を手伝ったことです。3年前に間伐した区画と手つかずのスギ林で、1m四方に生える植物を数えると、11種類と2種類でした。手つかずの林は昼でも薄暗く、斜面では土が流れて木の根が浮き出ていました。調べると、混み合った林は地面が暗くて下草が育たず、葉から落ちる雨粒がむき出しの土をたたき、土が流れやすくなると知りました。間伐で光を入れれば、下草は何年で戻り、土はどこまで守られるのか。貴学を選んだのは、演習林の『△△実習』で林の明るさや植生を自ら調べられるからです。入学後は森林生態学と土壌学を学び、〇〇教授の研究室で、間伐後の林床の変化を研究いたします。根の浮いた斜面を、土を抱える森に戻すため、貴学で学びたいと考えております。

400字・一般選抜(森林科学科)

この例文のポイント

  • 間伐した区画と手つかずの林で1m四方の植物を数え、11種類と2種類という差を、比べた条件とともに示しています。
  • 根が浮き出た斜面という観察を、下草が土を守る仕組みと結びつけ、森林科学科で学ぶ理由にしています。
  • 一般選抜の400字に収めるため、きっかけの説明は短くし、比べた数字と演習林での実習に字数を多く割いています。

※ 上記は例文です。教授名・授業名・エピソードはご自身の情報に書き換えてください。

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農学部・生命科学部の志望理由書でよくあるNG

一NG

「食料自給率を上げたい」「食の安全を守りたい」で止まっている

食料自給率や食の安全は、農学部が向き合う大切なテーマです。ただ、志望理由書に書かれることの多い言葉なので、それだけでは、あなたが何を見て、どこから手をつけたいのかが伝わりません。大きな言葉を使うなら、その後に、自分が見た売り場や畑、台所での出来事を続け、学科で学ぶことにつなげます。

書き直し例

「食料自給率を上げたい」だけで済ませず、「近所のスーパーで豆腐12種類の原材料欄を確かめると、国産大豆を使ったものは4種類でした。大豆を国内でもっと作るには何が壁になっているのかを、作物学から学びたいと考えております」のように、自分で確かめた事実から書き起こします。

二NG

「自然が好き」「動物が好き」だけで書いている

生き物や自然への関心は出発点として大切ですが、それだけでは理学部や獣医学部、環境系の学部との違いが見えません。農学部が主に扱うのは、人が育て、利用し、管理する生き物や自然です。好きな対象と人の暮らしが重なる場面を探し、そこで起きている問題まで書いてください。

書き直し例

「動物が好きなので」ではなく、「祖母の畑で、収穫前のサツマイモがイノシシに掘り返されました。柵を張っても入られる理由を知りたくてセンサーカメラを2週間置くと、柵の下を鼻で押し上げてくぐる姿が3回写っていました。動物の習性に合った被害の防ぎ方を学びたいと考えております」のように、生き物と人の暮らしがぶつかる場面から書きます。

三NG

「スマート農業」「6次産業化」などの用語を並べるだけ

学部案内やニュースで見かける言葉ほど、志望理由書に入れたくなります。ただ、用語を並べても、あなたがどの現場で誰の困りごとを見て、何を変えたいのかは伝わりません。用語を使うなら、その技術が自分の見た現場のどの手間や損失を減らすのかまで書き、面接で意味を聞かれても答えられるようにしておきます。

書き直し例

「スマート農業を広めたい」と書く代わりに、「職場体験先のトマト農家では、ハウスの側面のビニールを朝夕に手で巻き上げたり下ろしたりして温度を調節していました。気温の記録を見せていただくと、7月には、出荷作業で見回れなかった昼に35℃を超えた日が5日ありました。人の手が回らない時間の温度管理をどう自動化するかを学びたいと考えております」のように、技術が必要になる場面を先に書きます。

四NG

農業の厳しさや高齢化を嘆くだけで終わっている

担い手の高齢化や耕作放棄地の増加は、農業の大切な課題です。ただ、厳しさを並べるだけでは課題の説明で字数が尽き、あなたが大学で何を学び、どう関わりたいのかが書けません。なぜそうなっているのかを一つ掘り下げ、学科の学びにつなげます。

書き直し例

「農家の高齢化が深刻です」で終わらせず、「通学路沿いの田んぼ32枚のうち、この3年で草に覆われたのは5枚でした。持ち主の方に伺うと、水路の草刈りや泥上げを続けられないことが理由の一つでした。地域で農地を守る仕組みを、農業経済の視点から学びたいと考えております」のように、数えた事実と理由を書きます。

五NG

「家が農家だから」「継ぎたいから」だけで、大学で学ぶ理由がない

家の農業を継ぎたいという思いは、強い志望理由になります。ただ、それだけでは「家で教わればよいのでは」と受け取られかねません。継ぐ予定の田畑や果樹園で今どんな問題が起きていて、大学で何を学べばそれに取り組めるのかを書いてください。

書き直し例

「実家の梨園を継ぎたい」だけでなく、「家の梨園では、開花のころの遅霜で花のめしべが茶色く傷み、父と調べた2列の木では、実がつかなかった枝が3割ほどありました。霜の害を防ぐ管理を果樹園芸学から学び、継ぐ園地で試したいと考えております」のように、継いだ後に取り組みたいことまで書きます。

よくある質問

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学部ごとに、見られる観点・例文3本・NG例をまとめています。構成の基本と文系・理系の例文は大学の志望理由書の書き方で確認できます。

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