工学部の志望理由書

工学部の志望理由書の書き方と例文3本

工学部の志望理由書では、「ものづくりが好き」という気持ちを、技術で解きたい具体的な課題にまで落とし込めているかが問われます。このページでは、工学部の志望理由書で見られる3つのポイントと、機械工学科(800字)・電気電子工学科(600字)・応用化学科(400字)の例文、「就職に強い」などの避けたい言い回しと書き直し例をまとめました。理学部・理工学部との書き分けや、学科を決めずに入学する入試での書き方は、ページ後半のよくある質問で答えています。

工学部の志望理由書を3ステップで書く

  1. 1
    工学部の志望理由書は、壊れたものや使いにくい道具など身近な不具合を1つ選び、「なぜそうなるのか」を自分で確かめた事実から書き始めます。
  2. 2
    工学部を選ぶ理由は、その不具合を機械・電気電子・化学などのどの学科の技術で解きたいかと、目指す進路を結びつけて説明します。
  3. 3
    志望理由書の後半は、数学・物理の基礎から実験・演習、研究室へと進む学びの順に計画を書き、冒頭で挙げた不具合に戻って締めます。

このページが向いている人:工学部の機械系・電気電子系・化学系などを志望する高校生に向けたページです。総合型選抜や学校推薦型選抜のほか、一般選抜で志望理由書を求められた人も対象です。「ものづくりが好き」の先が書けない人、理学部や理工学部と迷っている人、学科を決めずに入学する入試で何を書くか悩んでいる人、面接で工学部を選んだ理由を聞かれる準備をしたい人に役立ちます。

工学部の志望理由書で見られる3つのこと

工学部の志望理由書では、作りたいものの名前よりも、技術で何を解決したいのかという問いが重く見られます。次の3点は、機械・電気電子・化学・建築・土木など、どの学科を志望する場合にも共通する観点です。

  1. 一

    「ものづくりが好き」を、技術で解きたい課題に言い換えているか

    工学は、数学や物理・化学の原理を使って、暮らしや社会の困りごとを解く方法やものを設計する学問です。そのため工学部の志望理由書では、ものづくりへの興味の先に、技術で解きたい具体的な課題があるかが見られます。古い扇風機の首振りが止まる、文化祭の机運びで腰を痛める人が出る、雨の日はスマートフォンの画面がうまく反応しないといった身近な不具合から、「なぜ壊れるのか」「なぜ負担が大きいのか」「なぜ反応が乱れるのか」と問いを立ててください。壊れた回数や作業にかかる時間など、自分で数えた数字があると、問いに説得力が生まれます。

  2. 二

    学科を選ぶ理由が、解きたい課題と対応しているか

    工学部は、学科によって扱う対象が大きく異なります。動くものや力・熱・流れなら機械系、電気・エネルギー・通信なら電気電子系、物質の性質や反応を生かした素材づくりなら化学系、建物や空間なら建築系、道路・橋・上下水道などのまちの基盤なら土木・都市環境系、プログラムやデータで課題を解くなら情報系が入り口です。志望理由書では、自分の課題がどの学科の技術で解けるのかを示すと、その学科を選んだ理由が一文で伝わります。学科の名前と学ぶ内容の組み合わせは大学ごとに違うため、カリキュラムで確かめてください。

  3. 三

    数学・物理の基礎から研究室まで、入学後の学びを順に描けているか

    多くの工学部では、1〜2年次に微分積分・線形代数や物理・化学といった基礎を固め、2〜3年次に学科の専門科目と実験・演習を重ね、4年次に研究室に所属して卒業研究に取り組みます。志望理由書では、この流れに合わせて、固めたい基礎、実験で確かめたいこと、研究室で取り組みたいテーマを年次の順に書くと、入学後の姿が具体的に伝わります。教員の研究分野を挙げるときは、研究室のウェブサイトで研究テーマを確かめ、自分の問いと重なる点を1文で示してください。研究室に所属する時期は3年次からの大学もあるなど大学ごとに異なるため、大学のウェブサイトや学部案内で確かめましょう。

工学部の志望理由書 例文3本

機械工学科は通学用の自転車で折れ続けたスポーク、電気電子工学科は台風による停電と家庭の太陽光発電、応用化学科は「生分解性」と表示されたカップを題材にしています。いずれも志望理由書に合わせた敬体の文章で、志望先の大学は「貴学」と書いています。

1

機械工学科・総合型選抜(通学用の自転車のスポークが折れ続けた経験から)

792 字

私は将来、鉄道車両や自転車など毎日使われる乗り物の部品を、長く安全に使える形に設計する技術者になりたいと考えております。そのために材料力学と機械設計を学びたく、貴学工学部機械工学科を志望いたします。きっかけは、片道6kmの自転車通学で、後輪のスポークが1年半で4本折れたことです。段差でぶつけた覚えはないのに、4本ともハブ近くの曲がった部分で折れていました。ルーペで見ると断面の一部は滑らかで残りはざらついており、本で調べて、これが「疲労破壊」の特徴だと知りました。一度では壊れない小さな力でも、繰り返しかかると割れが少しずつ進み、最後に折れる現象です。1年分の通学距離を車輪の周長で割ると、後輪はおよそ110万回転し、スポークはそのたびに力を受けていた計算です。針金でも確かめようと、90度と45度で10本ずつ繰り返し曲げると、折れるまでの回数は平均12回と41回で、角度を半分にしただけで3倍以上に増えました。小さな曲げでも繰り返せば金属は壊れ、その回数は曲げの大きさで大きく変わるのです。では、毎日数えきれないほど力を受ける機械の部品は、何回まで耐えるようにどう設計されているのか。その答えを、設計する側から学びたいと考えました。貴学を選んだのは、2年次の『△△実験』で金属の疲労試験に取り組み、力の大きさと壊れるまでの回数の関係を自ら確かめられるからです。また、〇〇教授が鉄道車両の車軸など、長く使われる部品の疲労強度を研究されている点も、私の問いに直結します。入学後は1年次に微分積分と力学を固め、2年次に材料力学と機械設計を学びます。4年次は〇〇教授の研究室で、繰り返し力を受ける部品の寿命を予測する方法を研究したいと考えております。折れた4本のスポークから始まった問いを、毎日使われる乗り物を長く支える設計につなげるため、貴学工学部機械工学科で学びたいと考えております。

800字・総合型選抜(機械工学科)

この例文のポイント

  • スポークが折れた場所と断面を自分の目で確かめ、疲労破壊という機械工学で扱う現象にたどり着くまでを順に書いています。
  • 針金を曲げる実験で、角度を半分にすると折れるまでの回数が3倍以上に増えた結果を示し、問いに根拠を持たせています。
  • 部品は何回まで耐えるよう設計されているのかという問いを実験科目と研究室に結び、総合型選抜の面接で深めやすくしています。
2

電気電子工学科・学校推薦型選抜(台風による停電と家庭の太陽光発電から)

593 字

私は将来、電力会社の技術者として、停電が起きても家庭の太陽光発電を安全に生かせる仕組みをつくりたいと考えております。電力変換と電力システムを学ぶため、貴学工学部電気電子工学科を志望いたします。高校1年の秋、台風で近所一帯が2日間停電し、晴れた翌日も、太陽光パネルを載せた家で冷蔵庫が止まったままでした。調べると、家庭用の太陽光発電は、停電した電線に電気を送り返さないよう、自動で止まる仕組みでした。多くの機器には、手動で切り替えると専用のコンセントから電気を使える自立運転の機能もあります。高校2年の課題研究で、町内会の協力を得てパネルのある23軒に尋ねると、停電中にこの機能を使えたのは4軒だけで、多くは機能自体を知りませんでした。手順を1枚にまとめて回覧したものの、知らせるだけでは非常時に使えるとは限りません。安全のために止める仕組みを保ったまま、停電中も家庭に電気を届けるには、どう制御すればよいのか。貴学を志望するのは、『△△実験』で電力を変換する回路を自ら組んで測定でき、〇〇教授が太陽光発電と蓄電池による災害時の電力供給を研究されているからです。入学後は電気回路と電磁気学から学び始め、4年次に〇〇教授の研究室で、停電中も家庭の太陽光発電を安全に使い続けるための制御を研究したいと考えております。晴れているのに冷蔵庫が止まる家をなくすため、貴学で学びたいと考えております。

600字・学校推薦型選抜(電気電子工学科)

この例文のポイント

  • 停電中に自立運転の機能を使えたのが23軒中4軒という聞き取りの結果から、知らせるだけでは足りない課題を示しています。
  • 安全のために止まる仕組みと、停電中も電気を使いたい暮らしの対立を問いに据え、電気電子工学科を選ぶ理由にしています。
  • 町内会と取り組んだ高校2年の課題研究を研究室での研究テーマまでつなげ、学校推薦型選抜で見られる一貫性を示しています。
3

応用化学科・一般選抜(「生分解性」と表示されたカップを土に埋めた実験から)

395 字

私は将来、化学メーカーの研究者として、使い終えた後に自然の中で分解される素材を開発したいと考え、貴学工学部応用化学科を志望いたします。きっかけは、地域の夏祭りの手伝いで回収した、「生分解性」と表示されたカップです。そのうち3個を花壇に埋め、1か月ごとに掘り出して洗い、乾かして量ると、重さは3か月後も平均2%しか減らず、形もほぼ残っていました。調べると、生分解性プラスチックには、高い温度と湿度がそろわないと分解が進みにくい種類があると分かりました。使う間は丈夫で、捨てた後には分解が進む素材を、分子の設計でつくれないか。貴学を志望するのは、『△△実験』で高分子を自ら合成し、分解の速さまで測定できるからです。入学後は有機化学と高分子化学を学び、〇〇教授の研究室で、土の中でも分解が進む素材を研究いたします。形の残ったカップを、土に還る素材でつくり直すため、貴学で学びたいと考えております。

400字・一般選抜(応用化学科)

この例文のポイント

  • 3個のカップを1か月ごとに量り、3か月で平均2%しか減らなかった結果を示して、表示と実際の差を数字で伝えています。
  • 使う間は丈夫で捨てた後は分解が進むという、素材に求められる二つの性質の両立を、応用化学科で学ぶ理由にしています。
  • 400字でも、実験の手順と結果、生まれた問い、志望校の実験科目と研究室を一つずつ書き、なぜその大学かを残しています。

※ 上記は例文です。教授名・授業名・エピソードはご自身の情報に書き換えてください。

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工学部の志望理由書でよくあるNG

一NG

「ものづくりが好き」「ロボットを作りたい」で止まっている

ものづくりへの興味は工学部を志望する自然な出発点ですが、それだけでは、何を、誰のために作りたいのかが伝わりません。「ロボット」のように作りたいものの名前で文章が終わると、学科や研究室を選んだ理由も書けなくなります。その先にある、技術で解きたい課題まで書いてください。

書き直し例

「ロボットを作りたい」で止めず、「介護施設のボランティアで、職員の方が利用者を抱えて車いすに移す作業を1日に何度も繰り返すのを見て、腰への負担を減らす補助装置の仕組みに関心を持ちました」のように、誰のどんな負担を減らしたいのかまで書きます。

二NG

企業名や製品名への憧れだけを書いている

憧れの自動車や新幹線、ゲーム機をきっかけに書くこと自体は構いません。ただ、製品の魅力や企業の紹介で字数を使うと、工学部で何を学びたいのかが見えなくなります。志望理由書は就職の志望動機ではないため、憧れた製品のどの技術に疑問を持ったのかまで書きます。

書き直し例

「新幹線に憧れています」で終わらせず、「新幹線の先頭が長くとがっている理由を調べ、高速でトンネルに入ったときに出口で生じる大きな音を抑える工夫の一つだと知って、空気の流れを扱う流体力学を学びたいと考えました」のように、製品の中の技術に踏み込みます。

三NG

流行の技術用語を並べるだけで、何を確かめたいのかが書かれていない

「IoT」「カーボンニュートラル」「次世代半導体」といった言葉は、ニュースで目にするほど志望理由書にも書きたくなります。ただ、言葉を並べても、あなたが自分の目で何を見て、何を知りたいのかは伝わりません。面接で仕組みを尋ねられることもあるため、使うなら体験とつながる一語に絞り、説明できるようにしておきます。

書き直し例

「インフラのDXに貢献したい」と書く代わりに、「通学路の橋で点検の作業を見かけて市に尋ねると、5年に1度、近くから目で見て確かめていると知りました。古い橋を少ない人手で長く使い続ける方法を研究したいと考えております」のように、見聞きした事実から書き起こします。

四NG

「就職に強い」「手に職がつく」を志望理由の中心にしている

工学部は求人が多いと言われることがありますが、就職の有利さや資格の取りやすさを理由の中心に置くと、工学部で何を学びたいのかが読み手に見えません。将来の仕事が決まっていなくても構いません。どんな技術を身につけ、それを何に使いたいのかなら、今の時点でも書けます。

書き直し例

「就職に強いから」ではなく、「仕事はまだ決めきれていませんが、身の回りの機械がなぜ動き、なぜ止まるのかを数式と実験で説明できる力は、どの道に進んでも土台になります。その力を機械工学の基礎から身につけたいと考えております」のように、学びたい中身を理由にします。

五NG

理学部や理工学部との違いを考えずに書いている

「物理が好きだから」「科学の発見に興味がある」だけでは、理学部の志望理由として読まれることがあります。理学が自然の仕組みそのものを解き明かす学問だとすれば、工学はその原理を使って、課題を解くものや方法を設計する学問です。どちらが優れているかではなく、自分の関心がどちらに向いているかを示します。

書き直し例

「物理が好きなので工学部を志望します」ではなく、「物理で学んだ共振が、大勢で渡ると歩道橋が揺れる現象にも関わると知り、揺れを抑える構造を設計する側に回りたいと考えました」のように、原理を何に使いたいかまで書きます。

よくある質問

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学部ごとに、見られる観点・例文3本・NG例をまとめています。構成の基本と文系・理系の例文は大学の志望理由書の書き方で確認できます。

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